💥 事件発生 — ぼくは今日から「コピペ係」
計画は完璧だった。企画はAI、量産もAI、歌うのもAI。人間の仕事は……?
作曲AI「」で10曲まとめて作る計画を立てた。曲の企画(どんな10曲にするか)は相棒のクロードが設計。それをChatGPTに渡して、10曲分の——曲の“レシピ”を一気に書いてもらう。それをSunoに流し込めば、10曲できあがり。
ところが現実は——ChatGPTの返事は長い長い文章のかたまり。その中から「2曲目のスタイル指定はどこ?」と探して、選択して、コピーして、Sunoの欄に貼る。Sunoの入力欄は1曲につき6つ。10曲で60回。
ぼくえーと、いま4曲目の……歌詞? スタイル? あっ、3曲目の歌詞を4曲目に貼った!!
クロード企画はAI、量産もAI、歌うのもAI。なのにそのあいだを人間のコピペがつないでる。設計ミスはそこだよ。バトンの受け渡しを、道具にしよう。
🕵 犯人さがし — 犯人は「自由な文章」だった
コピペ60回そのものより、もっと重い犯人がいた。
よく考えると、いちばん時間を食っていたのはコピペではなく「探す」だった。AIの返事は毎回形が違う。今日は箇条書き、明日は表、あさっては小見出し付きの丁寧な文章。どこに何が書いてあるか、毎回目で探していた。犯人は、AIの返事が「自由な文章」であること——つまり書式がないことだった。
クロードだったら、ChatGPTに「この書式で書いて」と最初に約束させよう。曲の区切りは「===SONG 1===」、その下にタイトル・スタイル・歌詞……と、1行ずつ決まった名札を付けてもらう。
ぼくお願いじゃなくて、契約書ってわけだ。
クロードそう。書式さえ守られていれば、あとは道具が——自動で仕分けできる。人間が探す仕事は、消える。
📐 契約書(統一書式)は、こんな形
ChatGPTへのお願いの最後に「必ずこの書式で出力すること」と付けて、10曲分をこの形で書いてもらう。曲の区切りと、欄ごとの名札。たったこれだけで、返事は“自由な文章”から“機械が読める指示書”に変わる。
===SONG 1=== TITLE: 夜明けの環状線 STYLE: dreamy city pop, mellow groove, 90s Japanese pop EXCLUDE STYLES: heavy metal, aggressive rap VOCAL GENDER: female WEIRDNESS: 40 STYLE INFLUENCE: 65 LYRICS: [Verse 1] 始発を待つホームで…(以下、歌詞が続く) ===SONG 2=== TITLE: 鉄塔とカモメ …(以下、10曲分つづく)
🐛 強敵あらわる — AIの返事は、微妙に揺れる
契約書を交わしても、相手はAI。真面目なのに、ちょっとずつ約束と違う。
さっそく道具に貼ってみると——カードが変な場所で切れている。原因を調べると、スタイル指定が長すぎて途中で改行されていたり、数値の欄に「40くらい」と書いてあったり。ウソはついていない。でも、微妙に約束と違う。それがAIの返事だった。
ぼく契約違反だ! 書式を守れって言ったのに!
クロード怒っても直らないよ。相手はAI、返事は揺れる前提で設計する。受け取る側が“上手な受け身”を取ればいい。
ぼく受け身?
クロード名札のない行が来たら「直前の欄の続き」とみなして連結する。歌詞だけは改行に意味があるからそのまま保つ。数値が読めなければ真ん中の50、範囲を外れていたら0〜100に丸める。——揺れを全部、受け止める側で吸収するんだ。
名札のない行が現れたら、直前の欄の続きとみなして連結。長いスタイル指定が途中で改行されても、ちゃんと1つにまとまる。
歌詞の改行は[Verse]や[Chorus]の構造そのもの。ここだけは連結せず、原文のまま保存する。
「40くらい」なら40と読む。読めなければ真ん中の50。101なら100に丸める。どんな返事が来ても、道具は止まらない。
🛡 この考え方には名前がある
「入力は乱れている前提で、受け取る側が寛容に処理する」——プログラムの世界で昔から使われる防御的な設計だ。相手が人間でもAIでも、他人の出力を信用しすぎないのが、壊れない道具の作り方。AIの返事の揺れは、怒るものではなく設計で吸収するもの。
🎉 完成 — 貼るだけで、10枚のカード
ChatGPTの返事を全文コピーして、道具に貼る。それだけで——
画面に10枚のカードが並んだ。1枚が1曲。カードの中はSunoの入力欄と同じ並びで、欄ごとにコピーボタン。「探す」仕事は消え、貼り間違いも起きようがない。
スタイルの欄をコピーしたらSunoのスタイル欄へ。歌詞の欄をコピーしたら歌詞欄へ。対応が1対1だから迷わない。
曲の“遊び度”などの数値はスライダーで微調整できる。AIの提案を土台に、最後の味付けだけ人間がやる。
Sunoに入れた曲からチェックを付ける。今どこまで進んだかが一目瞭然。10曲の行進も安心。
分解した10曲分のデータはファイルに書き出せる。「あの曲のレシピどれだっけ?」に効く曲の台帳が自動で残る。
ぼく60回の「探して、選んで、コピペ」が……「貼って、押すだけ」になった。
クロードこれでバトンは落ちない。人間の仕事は、コピペ係じゃなくて「どの曲を世に出すか決める係」に戻ったね。
AIとAIのあいだの60回のコピペが、
「貼って、押すだけ」になった。
🖱 実際の画面で、使い方(5ステップ)
できあがった道具を、本物の画面で。Claude → ChatGPT → アプリ → Suno の受け渡しを、実際のスクショで追います。
アプリで「指示文テンプレート」を用意する
STEP1 に、ChatGPTへ渡す指示文テンプレートが入っています。末尾の「10曲のコンセプト」欄に、Claude Code に作ってもらった10曲分のネタを貼り、「指示文をコピー」を押すだけ。「STYLEは1〜2個に絞る」「no 〇〇で個性を立てる」といったSuno運用のコツが、最初からテンプレに焼き込まれています。
ChatGPTに貼って、10曲分を書かせる
コピーした指示文を、ChatGPTにそのまま貼り付けて送信。契約書(統一書式)どおり、10曲分のプロンプトが ===SONG 1=== … の形式でまとめて返ってきます。
出力をアプリに貼って「解析してカード化」
ChatGPTの出力を丸ごとコピーし、アプリの STEP2 に貼り付けて「解析してカード化」を押します。名札(TITLE / STYLE / LYRICS …)を頼りに、10曲分へ自動で仕分けされます。折り返しや数値の揺れも受け止めるので、多少ラフでも大丈夫。
10枚のカードから、欄ごとにコピー
1曲=1カード。Sunoの入力欄と同じ並び(STYLE / EXCLUDE / VOCAL / 歌詞)で、欄ごとに「コピー」ボタン。WEIRDNESS / STYLE INFLUENCE はスライダーで最後の微調整もできます。「投入済み」チェックで、10曲の進捗も一目です。
Sunoへ、欄ごとに貼って生成
カードの「コピー」で写した内容を、Sunoの対応する欄(スタイル欄・歌詞欄)に貼るだけ。ひとつだけ注意は、歌詞の Lyrics Mode を必ず「Manual(Write Your Own)」にすること——Autoのままだと歌詞が反映されません(アプリのSTEP3にも同じ注意書きがあります)。
🔬 おまけ — 今回は「サーバーすら無し」
第4巻の道具とは、じつは体の作りが違う。今回はもっと身軽だ。
第4巻の一括ダウンローダーは裏で小さなサーバーを動かす作りだった。今回はHTMLファイル1枚をブラウザで開くだけ。ダブルクリックで起動する。
分解したカードや進捗チェックはというブラウザ内の引き出しに保存。閉じても消えず、外には一切送られない。
第4巻はSunoと通信する道具だったが、今回はどことも通信しない。プロンプトという“創作の企業秘密”が、PCの外に出ることはない。
🧠 いちばんの隠し味は「経験則の焼き込み」
この道具のChatGPT向けテンプレートには、Sunoを使い込んで得たコツ——「スタイル指定は欲張らず1〜2個」「“no 〇〇”(〇〇は無し)で個性を立てる」「感情は爆発させるより抑える方が刺さる」——が最初から埋め込んである。つまりこの道具は、コピペの手間を消す装置であると同時に、過去の自分の学びを毎回自動で反映してくれる装置でもある。コツをメモ帳に書いても忘れる。道具に焼き込めば、忘れようがない。
❓ よくある質問
Q1. 「suno-prompt-forge」は何をするツール?
ChatGPTが書いた10曲分の楽曲プロンプト(スタイル指定や歌詞などの指示書)を貼り付けると、作曲AI「Suno」の入力欄に対応した10枚のカードに自動で分解してくれる道具です。欄ごとのコピーボタンと「投入済み」チェックが付いていて、コピペの迷子と貼り間違いがなくなります。
Q2. なぜClaudeとChatGPT、2つのAIを使い分けるの?
役割分担です。曲のコンセプト設計はふだん一緒に制作しているClaudeが、決まった書式での量産はブラウザで手軽に頼めるChatGPTが担当。大事なのはAIの銘柄ではなく「受け渡しの書式を固定する」ことで、書式さえ守られれば、どのAIの組み合わせでも同じように機能します。
Q3. このツールは配布してる?
していません。自分の制作フローに合わせて作った、完全に自分専用の道具です。ただし仕組みはシンプル(HTML1枚とブラウザだけで動く)なので、生成AIに相談しながら誰でも同様の道具を自作できます。あなたの「AIとAIのあいだの手作業」も、きっと道具にできます。
🌙 教訓 — AIとAIのあいだに、道具を置く
入口(プロンプト作り)と出口(曲の保存)が道具になった。真ん中のSunoは、歌うだけ。
📌 この一件で学んだこと
- AI同士をつなぐ“最後の1メートル”は、人間のコピペ。そこにこそ道具を置く価値がある。
- AIとの約束は、お願いではなく書式で交わす。出力形式まで指定すれば、返事は「機械が読める指示書」になる。
- それでも返事は揺れる前提で受け止める。怒るのではなく、受け取る側の設計で吸収する。
- コツはメモではなく、道具に焼き込む。テンプレートに埋めた経験則は、忘れようがない。
これで、作曲まわりの道具は2つになった。第4巻の「一括ダウンローダー」が曲の出口を、 今回の「プロンプト工房」が曲の入口を受け持つ。真ん中のSunoは、歌うことに専念してもらう。 こうして、道具は制作の流れ(ワークフロー)ごとそろっていく。